信頼できる学者かどうかを見分ける方法とは?

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前の記事に引き続き、どの学者が信頼できるか
自分なりに見分ける方法を探っていきたいと思います。

この記事では、元京都大学原子炉実験所助教、
元京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻助教の
小出裕章さんを例にしてみます。

助教どまりだったのは大学からの圧力ではなかった

小出さんは2015年3月に定年退職されるまで、
ずっと助教という低いポジションにいました。

反原発派の間には、小出裕章さんが助教どまりだったのは
京大からの圧力があったからだという話が
まことしやかに囁かれていることが多いようですが、
実はそれは正しくありません。

ご本人へのインタビューによれば、
小出さんが助教にとどまったのはご本人に出世欲がなかったからだそうです。

出世欲のなさについては、
以下のインタビューの中で語られています。

「──それ以来、ずっと助教(助手)ですか? 教授になって、地位や名誉、お金を手に入れたいと思ったことはないのですか?

【小出】 全く思いません。37年間ずっと最下層の教員でしたが、私にとっては理想的な仕事場です。誰からも命令されたことも、命令したこともありません。ずっと自分の好きな研究を続けていられます。本当に幸せだと思います。生活は普通にできていますし、今よりもっとお金がほしい、もっと贅沢な暮らしをしたいと思ったこともありません。研究や講演の合間に行く山登りと温泉が、私にとっての最高の贅沢です。」(「私が原発を絶対に認めない理由_小出裕章(京都大学原子炉実験所助教)インタビュー[第3回]」

 

また、小出さんの出世を妨げる圧力が研究所内に存在したかどうかは、
以下のように小出さんご自身がご発言されています。

「石丸:
話は変わりますが、小出さんはなぜ助教なんですか?京大原子炉実験所ってどんなところですか?

小出さん:
私の個人的な性格だと思いますが、誰かに命令することが嫌いなんです。そして、誰かから命令されるのが嫌いなんです。ですから、組織を私が背負うということ は大嫌いなわけですし、教授というような立場に立って人々に命令していくというのは私が一番嫌なことなのですね。私はひとりの私なのであって、私のやりたいことをやるというのが何よりも私にとって大切なわけで。一度も教授になりたい、と思ったことはありません。

現在のポストが一番私にとって快適なポストです。本当は助教というのは教授・准教授・助教という教員の中の最下層の立場ですから、本当であれば、教授や准教授が私に命令してくるはずなのですが、私が39年前に原子炉実験所に就職した時からずっと私の上に立つ人たちは、私に関しては一切の命令をしないというそのような立場を貫いて下さったので。

石丸:
それは実験所がそういう良い環境だったのですか?

小出さん:
そうではありません。私が所属した研究部門の特殊性があったと思いますし、それに加えて、放射線測定という仕事なのですが、その特殊性のために一切の命令を実験所の方から命令をしないという、その代わり、私は私の責任を果たすというお互いの合意のもとに命令を受けなかったということです。」(「小出裕章生出演! 「人類が初めて遭遇する原子力開発史上最悪の事故が今、まだ進行中だということです」~第1回放送【2】」ラジオ・フォーラム

 

 

科研費の採択状況

また、KAKEN – 科学研究費助成事業データベースも見ましたが、
小出さんは科学研究費助成事業、
通称「科研費」に一回も採択されていませんでした。

日本学術振興会のHPによれば、科研費は

「人文・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までの あらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究資金」であり、ピア・レビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行うもの」

です。

色んな種類があるのですが、
大学院生でも修士二年目から応募できるものもあります。

大学院生の時点で取れたら一目置かれて、
院生を基本雑魚扱いするような教員でも
人扱いしてくれるようになります。

院生は科研費を取れれば優秀な研究者の卵、
学者は科研費を取れて一人前という風潮があります。

通常は、教員だと大学当局から科研費などの
競争的資金を取るようにせっつかれるし、
研究資金が潤沢になるし、経歴に箔も付くので
大抵の学者は毎年のように応募します。

実際採択されたらされたで報告書作成の雑務に追われ、
予算執行のための書類作りに追われ…で
ろくろく研究できなくなるのですが…。

そのため、京都大学の助教が定年まで一度も採択されずに
退官するというのは非常に珍しいです
(しかも東大と京大はやはり採択されやすいので)。

これはおそらくですが、「採択されなかった」というよりは
そもそも「応募しなかった」のだと思われます。

出世するには科研費の採択歴も見られますから、
ここからも小出さんの出世欲がなかったという発言を
裏付けることができます。
 

信頼できる学者か見分ける方法

では、どうすれば結局のところ
信頼できる学者かどうか見分けられるのか?

 

自分の専門分野のように論文を読んで完全に理解できればいいのですが、
それは残念ながら私には無理です。

いくら勉強したとはいえ、専門家ではありませんので…。

方法論としては、以下の二つが挙げられると思われます。

・当該の学者/反対派(原発推進派・安全派の学者)の言説の一貫性を見る
・当該の学者の学界での業績
 (査読付き論文の数、著作を出した出版社はどこか、
 論文を掲載している雑誌の種類など)を見る

 

言説の一貫性を見ることは非常に大事です。

時々によって言うことが変わっている学者は信用できません。

業績については、小出さんの場合だと、
論文掲載誌を見てみましたが
学会誌にはごく稀に論文が載っている程度です。

あとは、技術系出版社が出している季刊雑誌(『技術と人間』)や、
左派系の雑誌(『週刊金曜日』)、
あとは岩波書店発行の月刊誌(『科学』)など。

ちなみに理系ではどうか知りませんが、
文系では岩波書店から本を出したら一流だと言われています。

理系の雑誌については、残念ながら私には分かりません。

雑誌のインパクト・ファクターを調べられたらいいのですが、
インパクト・ファクターには著作権があり
契約している研究機関からしか見られませんので残念です。

しかし、小出さんが論文を載せていた雑誌は
ほとんどが大学図書館に置いてある雑誌なので、
まずトンデモ説を掲載している類のものではありません。

文系の雑誌は院生時代にけっこう手広く読んでいましたが、
さすが大学図書館は購読しているものが
その分野の主流派の雑誌を手広くカバーしている品揃えで
いわば傍流にあたるものは置いていませんでした。

理系の雑誌も同じくでしょう。

ですので、小出さんへの学問的信頼性はまず問題ないかと思います。

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