南半球に避難した元博士課程学生が考えた、放射能安全論側の矛盾

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日本政府は現在の放射線量では
直ちに健康に影響はないと主張しますが、
政府の安全基準はブレています。

事故前までは一般公衆の法定被ばく限度が1mSV/年だったのが、
いったん事故が起こると20mSV/年に上げて、安全だというのは…。

20mSV/年で十分安全ならば、最初からその数字でもよいはずです。

そうして一般公衆の被ばく許容量を20mSVまで引き上げる一方で、
放射線取扱従事者へのそれは事故前と同じで、
電離放射線障害防止規則4条に基づき1年間で50mSV、
5年間で100mSVを超えてはいけないという規則はそのままです。

放射線取扱従事者の年間被ばく許容量

放射線管理区域の線量レベルは年間5mSVであり、
労働基準法では18歳以下が働いてはいけないと定められています。

さらに、20mSV/年は原発労働者が白血病になった際に
労災認定が下りる数字
です。

このように、今でも放射線取扱従事者は5mSV/年の上限を守り
20mSV/年被曝したら労災認定が下りるのに、
原発事故以来全年齢の一般公衆の法定被ばく限度は20mSV/年なのです。

文部科学省の読本と東電のHPでは質論のみが言及されており、
量論については触れられていませんが、
量を考慮すると安全論の主張は矛盾します。

ですので、その矛盾を露呈させないため、
事故前の年間被ばく許容量などの量論について
あえてあまり触れていないのでしょう。

「現在の放射線量/放射能量は質量ともに安全」の嘘

文部科学省が出した放射線副読本で述べられている
量論の扱われ方について
良い指摘をしているサイトを見つけましたので、
長いですが以下に引用します。

 まず、三種類(菊川注――小学生用、中学生用、高校生用)のどれにも原発事故はおろか原発自体の写真が一枚も掲載されていないのだ。
 福島原発事故についての記述は、小学生用で「放射線を出すものが発電所の外に出てしまいました」、中高校生用で「放射性物質(ヨウ素、セシウムなど)が大気中や海中に放出されました」と「はじめに」のページに記載されているだけ。

 代わりに自然界の放射線や、医療、学術研究分野などでの放射線の活用事例が紙幅を割いて丁寧に説明されている。

 「私たちは今も昔も放射線がある中で暮らしています」(小学生用)

 「イランのラムサールやインドのケララ、チェンナイ(旧マドラス)といった地域では、世界平均の倍以上の放射線が大地から出ています」(中学生用)

 産業界での活用例とあわせ、放射線が身近な存在であることを強調している。一方で原爆や原発事故の影響を過小評価しているのも特徴だ。
 小学生用の「放射線を受けると、どうなるの?」の項目には「たくさんの放射線を受けてやけどを負うなどの事故が起きています」「広島と長崎に原爆が落とされ、多くの方々が放射線の影響を受けています」とある。原爆はもとより一九九九年の東海村JCO臨界事故でも被ばくによる死者が出たにもかかわらず、そうした紹介はない。

 放射性物質の半減期についても、図付きの例は「一カ月後に放射性物質の個数が半分になる例」。除染の焦点となっている半減期が半永久的に長い核種には触れない。
 「事故が起こったときの心構え」のページにはこんな文章もある。
 「時間がたてば放射性物質は地面に落ちるなどして、空気中に含まれる量が少なくなっていき、(中略)マスクをしなくてもよくなります」

 

このように、多量の放射線を受けると
体に影響があることについては触れているのですが、
どのような影響を受けえるのか
――精神疾患、ブラブラ病、白血病、癌、死亡など――について
具体的な内容には踏み込んでいません。

放射線を多量に受けた方々が亡くなった
JOC臨界事故という事例があるにもかかわらず、
「やけどを負うなどの事故」
「多くの方々が放射線の影響を受けています」と
述べるにとどまっています。

ですので、これらの被曝の影響を過小評価している記述から、
「質量ともに問題なし」と政府は考えていると先の投稿で書きました。

さて、この20mSV/年について
他の専門家がどういう発言をしているかを少し見てみます。

20mSV/年への評価――――内閣官房参与の抗議の辞任

2011年4月29日に、当時内閣官房参与であった
小佐古敏荘東京大学教授
(原子力学・環境影響評価(含放射線生物学))は
衆議院第一議員会館にて参与辞意を表明する記者会見をしました。

小佐古教授は20mSV/年という基準が決められたことについて、
「容認すれば私の学者生命は終わり。
自分の子どもをそういう目に遭わせたくない」

抗議の辞任を行いました。

「年間20ミリシーベルト近い被ばくをする人は
原子力発電所の放射線業務従事者でも極めて少ない。
この数値を乳児、幼児、小学生に求めることは
学問上の見地からのみならず、
私のヒューマニズムからしても受け入れがたい」
と発言しています。
「内閣官房参与辞任,小佐古氏辞意表明全文:年1mSvで運用すべき!」

小佐古教授の科研費データベースを見てみると、
科研費の採択件数もそこそこありますので
信頼に足る研究者と言えると思われます。

同じ20mSV/年の被曝をしても、
放射線取扱従事者に労災認定が下りる一方で
一般公衆には「放射能は自然界にもあるもので安全だから」と
何の保証もなし。

事故直後の暫定的な措置としての許容量引き上げだとしても、
4年半はさすがに長すぎます。

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