「アイルランド人は白人だから、
白人世界で差別を受けることはないのでは？」
…と日本人は思いがちかもしれませんが、
実は今でも差別はあります。
今でも、というのはアイルランド人は
かつて隣国イギリスから数百年間侵略され続け、
差別されていた歴史があるからです。
今でも、南アイルランド出身の女優や俳優が活躍すると
イギリスの報道では「彼／彼女はイギリスの誇り。イギリス人だ」と報じられます。
北アイルランドはイギリスの一部ですが、
南アイルランド＝アイルランド共和国はもはや独立して
イギリスの一部ではないのにです。
そして、同じ南アイルランド出身でも
犯罪者や不名誉なことをした人のこととなると
「アイルランド人」として報じられるのです。
ここニュージーランドは元々イギリス系の移民の国なので同じようなもので、
今年初めにそれを実感する機会がありました。
今年の1月にイギリス出身のアイリッシュ・トラベラーが
ニュージーランドを旅行中にビーチで自分達のゴミを捨てなかったり
飲食店で無銭飲食をしたりと何件も迷惑行為をしてニュースになったことがありました。
その時に出た新聞記事がこちら。
トラベラーという言葉だと分かりにくいですが、
日本語だと「ジプシー」と言えば馴染みがあるのではないでしょうか。
一定の居住地を持たず、移動し続ける民族です。
アイリッシュ・トラベラーはアイルランド系のジプシーで、
アイルランド国内には推定で2万人超、
イングランド国内には推定で1万5000人から3万人が存在するそうです。
「イギリス出身のアイリッシュ・トラベラー」と言うとややこしいですが、
要は祖先がアイルランド系なだけで、れっきとしたイギリス人なんです。
このイギリス人達の迷惑行為に関するニュージーランドでの報道では
ビーチでゴミを片付けない彼らと地元住民の口論が録画されたビデオが流されました。
それで、彼らの英語のアクセントからアイルランド人だろうと予想され、
「アイルランド人がニュージーランドで迷惑行為をしている」
という報じ方がされていました。
彼らが「アイルランド人」ということがとても強調され、
連日ニュースで報道されていました。
ところが、しばらくすると彼らの身元が分かり
イギリス人だと判明したのです。
すると報道は急にトーンダウンし、
私の記憶が正しければそれから2・3日で何も報じられなくなりました。
まだ彼らがアイルランド人だと推測されていた段階では
数日間毎日報道されていたのにです。
これには私のアイルランド人のパートナーもショックを受けていました。
「イギリス人やイギリス系の奴らはいつもこうだ。
俺達が良い事をしたら『イギリス人だ』って言って
名誉をイギリスのものにして掠め取るくせに、
何か嫌なことがあれば手のひらを返してすぐアイルランド人のせいにして…。」
と悔しそうに言っていました。
英語圏の国で取られたアンケートでは
男性のセクシーな英語アクセントの第一位がアイルランド訛りだったりして
一見もう差別がないように見えるのですが、
まだ完全にはなくなっていないようです…。
