自助グループが合わないという人に一度見てほしい映画

自分はアルコール依存症である、と認めてもらうには
失職や離婚など飲酒で失態を犯した直後に働きかけるのが効果的です。

私のパートナーはアルコール依存症で、
最近仕事と車を飲酒で失ったので(前の記事を参照)
これはチャンス、と思い彼にMy Name is Bill Wという映画を見てもらいました。

邦題は<ジェームズ・ウッズの ドランカー>です。

1989年の映画で、アルコール依存症者の自助グループの創始者
ビル・ウィルソンがアルコホーリクス・アノニマス(AA)を作るまでの
経緯を描いたドキュメンタリー映画です。

現在では、アルコール依存症だけではなく、
色んな依存症の回復リハビリ施設でよく上映されている映画のようです。

ビルが青年として過ごした1900年代初頭では
アルコール依存症に対する有効な治療法が発見されておらず、
ビルは進行していく依存症に苦しんでいました。

妻のロイスがあわや死にかけた時にも飲酒ですぐに駆け付けられず、
ロイスの目の前で神に誓っても、仕事を失っても止められない飲酒。

幾度目かの入院の際に、ロイスは医師から
「あなたの夫は、断酒しなければあと1年で死ぬ」と宣告されます。

退院後にロイスが家に戻ると、窓辺にビルがぼんやりと佇んで外を眺めています。

このシーンでのビルの言葉が、本当にアルコール依存症者の苦しみを表していて
私は見ていて息を呑んだので紹介します。

下手な訳で見苦しくて申し訳ないですが…。

ロイス:気分はどう?(How are you feeling?)

ビル:まあまあかな(Alright, I guess.)

ロイス:聞いてもいい?心配してたんだけど…あなたの飲酒は私に何か原因があるの?(Can I ask you something? I guess I’ve been afraid… does it have anything to do with me? Your drinking?)

ビル : そうじゃない、僕のせいだ(No. It’s not you. It’s me.)

妻 : どうして?どうしてそんな風に飲酒するの?(Why? Why do you do it to yourself?)

ビル : 午後ずっとここに立って僕も同じ質問を自分にしている。どうしてかって?窓の外を見て、普通の人達が歩いているのを眺めてる。おかしいのは、僕はこれまで人生で本当に普通だって感じたことがないと思うことだ…。他の人達のように。なぜか違うって感じるんだ。基準を全然満たしていないっていうか。物心がついてからずっと心の底でそんな風に恐れを感じる…。人々がお互いに気楽に笑いあっているのを見て、自分はそれを外から覗いている。多分、自分は受け入れられないんじゃないかって怖いんだ。それで海外に行って、お酒を見つけた。2、3杯飲むと、これまでいつも感じてみたかったみたいに楽になった。人に対処できる勇気、物事をできる勇気、夢を見る勇気をもらえた。お金も成功も尊敬も、しばらくの間はうまくいったけど、十分ではないように見えた。僕はいつも生きている実感、自分に価値がある実感が欲しくて、全部二倍欲しがった。そして…全てが徐々に消えていった。裏切られたみたいに感じて、怒った。僕はいつも恐れでいっぱいだ。だから、もっと飲んだ…しばらくの間はそれで問題なくなった。明日になればすぐ状況は良くなるって、君のために何とかするって、自分を納得させるのに、状況は悪くなるだけだ。僕は…君に、他の人に、自分自身に、「これで終わりだ。もう飲まない。禁酒する、これが最後だ!」って約束し続けてる。本気なんだ、でも…罪悪感で…憂鬱感で…僕は鏡を見られない。特に君を見られない。僕は全てを信じるのを止めた。人々も、神も、自分自身も。狂っているように聞こえると分かっている、それなのに、たった今僕が何よりも欲しいのは…酒なんだ。(I’ve been standing here all afternoon asking myself the same question. Why? I look out the window and I watch all the normal people walking by. It’s funny, I don’t think I’ve ever felt really normal all my life… I mean like other people. I feel different, somehow. Like I don’t quite measure up. Ever since I can remember I’ve had this feeling… deep down in my gut. Scared. I see people… laughing, at ease with each other. I’m on the outside looking in. Afraid, maybe, that I won’t be accepted. And then, overseas, I found that a drink… a few drinks… makes me feel comfortable. Like I always want to feel. Gives me courage… to be with people… do things… to dream. The money, the success, the respect, it was all good for a while, but it never seemed enough. I always want… doubles of everything to make me feel alive, worthwhile inside. And then… it all began to slip away. I feel cheated. Angry. Always so full of fear. So I drank… more… and it makes it okay for a while. I convince myself that things will turn around tomorrow. Soon. That I’ll make it all up for you, but it only gets worse. I… I keep promising you… others, myself, that’s it, no more, going on the wagon, THAT’S IT! And I think I mean it, but… but the guilt… and the depression… I can’t look in a mirror… or at you… especially… especially at you. I’ve stopped believing in everything. People. God. Myself. I know it sounds insane, Lois, but in spite of all this, what I want right now more than anything else… is another drink. )

その他にも「ごめん。これで最後、もう飲まないから」と約束をするビルに
ロイスが「もう謝罪も約束も聞きたくない!」と叫ぶシーンでは
彼が涙していたりと、色々と気づくきっかけになったようです。

「もう謝罪も約束も聞きたくない」はそのまま同じ言葉ではないですが、
私も彼に言ってきました。

自分がビルと同じようなことをして同じようなことを言い、
ロイスが私と同じ反応をして同じ言葉を言ってきました。

違う人間が違う時代で、彼と同じ病気にかかって同じ苦しみを抱えていて、
家族も同じ苦しみを抱えて同じ反応をして似た言葉を言っていた、
というのはとても興味深かったです。

自分や家族、または友人や知り合いに依存症で苦しんでいる人がいれば
ぜひ一度見てほしい映画です。

依存症がどんなものなのかがよく分かりますし、
依存症者が互いに助け合う自助グループの成立の経緯も勉強になります。

依存症に苦しんでいなくとも、映画としてとても良い出来なので
もっと一般に知られていたらいいのにと思います。

私のパートナーは半年ほど前に自助グループに一ヶ月ほど出ていましたが、
断酒の必要性を感じていなかったのと、
「自助グループの雰囲気が合わない。何だか宗教的な感じがするし」
とミーティングに出るのを止めてしまいました。

自助グループに出なくとも回復の可能性はもちろんありますが、
今後自助グループに出なくても、
依存症に苦しんで、でも回復した創始者のドキュメンタリーを見てもらうことで
自分と似たところを見つけて病識を持つきっかけになったら、
そして依存症は病識を持ちきちんと治療をすれば治るのだと知って希望を持ってほしい…
と望みをかけてこの映画をパートナーに見せました。

映画を見終わったパートナーは
「もう一度、自助グループに出てみるよ」とAAに出てくれました。