ニュージーランドではウイルスの封じ込めがうまく行き、
新規感染者の数が毎日一桁となりました。
しかしウイルス封じ込めがうまく行っている一方で、
職を失った短期ビザの外国人達は地獄を見ています…。
ニュージーランドの南島にはクイーンズタウンという
観光業で栄えている(いた)街があるのですが、
全国封鎖に先立った国境封鎖で海外からの観光客が来なくなり
観光業、飲食業、小売業のホスピタリティー業界は経済的に大損害を受け
全国封鎖以前に解雇された短期ビザの外国人がたくさんいます。
ホスピタリティー業界は短期ビザの外国人が支えています。
彼らは全国封鎖前に母国に帰ろうと航空券を取ったのですが、
フライトが直前でキャンセルになったり、
さらに市民権がない外国人の国内移動が当初は禁じられたため
国際線が多く就航するオークランドまで辿り着けなかったり、
またフライトが直前価格なので非常に高額で取れなかったりで
ニュージーランドに閉じ込められてしまいました。
ガーディアン紙によれば、
人口が約16000人の街で5000人が食料と住宅の補助を含む
Emergency Helpに登録しているという緊急事態です。
そして、そうして困窮している人達の多くが短期ビザの外国人です。
クイーンズタウンがあるオタゴ地域の長は
「彼らに救済措置を!」と政府に3月末から要請していますが、
政府は「協議中」と言って未だに何もせず、
かれこれ一か月以上「協議中」の状態です。
働けなくなった人達への政府からの賃金補助はあり、
それは短期ビザの外国人ももらえますが、
それは全国封鎖が決まった時点で雇用があった人達だけが対象で、
全国封鎖前に解雇されていた人達は対象とならず、もらえません。
解雇となった場合は、雇用契約書に基づいて
雇用期間に応じた退職手当金が雇用主からもらえますが
(おおよそ、四週間分の賃金)、それだけです。
新しい仕事が決まったので前の仕事を退職したら、
新しい仕事先からのオファーが全国封鎖で取り消しになり
賃金補助がもらえなかった、というケースもあります。
あるいは、仕事探し中に全国封鎖になって
求人が出なくなったので仕事を探せなくなったというケースもあります。
いずれのケースにせよ、
貯金がなくなれば食べ物もなく、
もうすぐ冬になるこの国の路上で寝るしかありません。
全国封鎖の間も家賃や光熱費、食費など発生するのに
収入も政府からの補助もなく、
さらに短期ビザなので生活保護への申請資格もありません。
4月28日からレベル3に移行し飲食店はデリバリーのみ提供できますが、
全体としてホスピタリティー業界の先行きは不透明で、
いつ仕事が再開できるかは不明です。
短期ビザの外国人であろうとも
国民、永住権保持者と同じく税金を納めてきたのにこの扱いか、
どうしたらいいんだろうね、
という話を昨日アイルランド出身のパートナーとしていました。
私は嘆願に署名したり、政府にメールで要望を送ったりしていますが
特に何の手応えもない、ということを彼に言うと、
彼からこんな返事が返ってきました。
「簡単だよ。ホームレスになったら路上で騒ぎを起こせばいい。
自分の排泄物を手につけて、その辺の公共物にでもなすりつけてやるとか。
そしたら警察が来るから、警察官に
『俺がこうして路上で暮らさざるを得ないのは政府の失策のせいだ。
俺の責任じゃないぞ。Lock me up, bitch!』
って言えば刑務所で三食付きの場所に収容されて安全だろ。
しかもマスコミが嗅ぎつけるだろうから、
窮状が報道されて、それで世論が動いて救われるじゃん」
「それは、出所した後はビザ取り消しで国外退去なのでは?」
という心配が私の頭には浮かびましたが、
それでも、いざとなれば有効な手段かもしれないとも思いました。
政府の無策によって貧窮している訳で、
自分達には何の落ち度もなく、単に政府の責任な訳ですから。