家出から戻って聞いた衝撃的な話

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二日間の息抜きが終わって土曜日の朝に自宅に戻ると、
ガレージのソファーでぼろぼろの状態で寝ていて、
私が車をガレージに駐車するために開けたシャッターの音で目覚めかけた彼がいました。

「二日間どうだった?何してた?」と聞くと
「聞かなくても分かると思うけど…ずっと飲んでた」と。

彼一人で過ごした二日間はなかなかハードだったようです。

Uberで酒屋と家を往復していて、
嵐の夜に外で毛布にくるまりながらUberを家の前の道で待っていたら
車道を共有しているお隣の一家が車で帰ってきて、
自分のUberかと思って近づいたから「惨めな姿を見られてしまった」とか。

あとは、火曜からシャワーも浴びずにひたすら喫煙していたら、
煙草を吸う時に使う右手の人差し指と中指の先端の皮膚が
どういう仕組みか黄疸みたいに黄色く変色したらしいです。

といっても皮膚内部からの変色ではなく、
煙草の煙というか汚れというかそういうのが皮膚に着いただけで
歯磨き粉で洗ったら取れたらしいですが…。

それに気づいてからはもう煙草を買いに外に出るのも恥ずかしくなって、
でも喫煙したくて仕方なかったから、ガレージの床に落ちている煙草を吸っていたと。

その前日のオークランドの天気は夕方から深夜にかけて雷雨でした。

気温のせいか雨に濡れた衣服のせいか
二週間ろくに食事を取っていなくて栄養失調のせいか、
彼はガレージで骨の髄まで寒くて仕方なくて、
一人で飲酒喫煙して震えながら、自殺を考えたらしいです。

考えただけではなく、実際に梁にロープを吊って首の周りにかけたそうです。

「死ねばこの苦しみを終わらせられると思ったけど、
死ぬ時の痛みを考えると怖くて、自分は臆病だからできなかった。
それに後に残される家族や君のことを考えると申し訳なくて、
自殺は自分勝手だと思うからしなかった」
と打ち明けられました。

私は驚きつつも、どこか冷静に
「希死念慮もアルコール依存症によくある症状で、
自殺者のうちアルコール依存症者が占める割合が凄く高いって
最近読んだ記事に書いてあったっけ…」と考えていました。

「これが俺の底付きだと思う。これ以上下に行くのは不可能。
実は今日から新しい現場に行くことになったから、今日はあと1、2本だけ飲んで、
今日明日の友達に会う予定を全部キャンセルして離脱症状を月曜までに終わらせる」
と彼が言っていて、遂に回復への道を歩き出すのかと私は愚かにもぬか喜びしました

時間にすると1時間くらいでしょうか。

その底付き発言の1時間ほど後に彼の旧友が彼に
「今クイーンズタウンからオークランドに出てきてて、
来週火曜にアイルランドに永久帰国するからその前に一緒に飲もう。
お前の家にもうすぐ俺たちが手配したUberが着くから、酒持って来いよ」
と連絡をしてきたのです。

彼は迷った末に(?)誘いを受け、残っていたお酒を持って
「明日帰ってくるから」といそいそと出かけていって私は激高しました。

本当に底付きだったのなら、そんなにすぐに飲むのでしょうか…。

「あんたの新しいフラットメイトを見つけ次第、私はこの家を引っ越して別居だから」
と彼にテキストを送り、ボンドの名義移行手続きなど各種手続きを考えながら
一日過ごしていたら20時過ぎの当日に彼が旧友とその彼氏と
彼氏の妹(同じ町出身で皆知り合い)を引き連れて帰宅。

周りに人がいなくなった時に「別れないでください。チャンスをください…」と言う彼に
「私はあなたをサポートしたいけど、こんな風に行動し続けるようではサポートできない。
自力ではもうどうにもできないことを分かっているのであれば、
CADS(オークランドにある依存症専門治療機関)でプロの助けを借りてほしい。
抗不安剤も今みたいに頻繁に飲み忘れず、きちんと毎日服用してほしい。
AAに毎週行ってほしい。あなたの努力を見せてくれないと私には希望が見えない」
と伝えました。

彼は「明日からはもっと良くやる自分になるよ」
と言って友達が待つガレージに向かい、私は就寝。

翌朝起きてガレージに顔を出すと、
ワインを直接瓶から煽りながら友達と楽しく話す彼の姿
が…。

その3時間ほど後には、彼はその夜に仲良くなった、
旧友の彼氏のしつこい誘いに負けて近所のバーへ
「一杯しか飲まない、一時間だけで帰ってくるから」
と申し訳なさそうな顔で私に言ったと思ったら、
友達と歌いながら車で旅立って行って私は再び激高しました。

一時間きっかり待って、バーに行くと二杯目を飲みつつ楽しく談笑する彼がいました。

友人たちは私たちの家にいた時点から彼が何回断っても
「行こうよ!飲もうよ!一杯だけ!」としつこかったからそれにも私は苛々していて
(でも、本当はどんなに彼らがしつこかろうと
彼が断わり続ければいい話だから理不尽な怒りです)、
私が彼に近づいて「時間だから、帰ろうか」と笑顔で声をかけたつもりが、
凄い顔をしていたようでした。

「あと一杯だけ…」と言いかけた旧友の彼氏を完全に睨んでしまって、
その人は私の剣幕を察して黙りました。

そして私は彼を半ば引きずるようにして帰宅。

家族の対応として、飲酒を見張ってはいけないから大失態ですね。

でも、こういう小さいことでも、近い人の言葉を何も信じられないというのは
本当にボディーブローみたいにしんどい
です。

愛する人の言葉が本当に何の意味も持たない、基本的に全部嘘で裏切られる、
でもそれに反応してはいけない
、というのは結構気が狂いそうになります。

心が狭い私には車に轢かれて頭を強く打つなりして解脱して
仏か菩薩にならないと無理です。

依存症には孤独であることも原因なことが多いみたいだから、
旧友と再会したのは良かったと思いますが…

彼は旧友に今の状態を話したらしく、その旧友は今貯金があまりなくて苦しい状態なのに、
彼に「アイルランドに一時帰国するのがいいと思う。
私は火曜のフライトで帰るけど、必要ならあんたの航空券を私が買ってあげるから、
同じフライトで帰ろう」と言ってくれたらしいです。良い友達だなあ…。

彼は「火曜から新しい仕事が始まるから今は帰れないし、
お前もそんなにお金ないんだからいいよ」と断ったらしいですが。

私はその話を聞いて、「私も彼女に賛成。
アイルランドに一か月くらい一時帰国して家族の元でゆっくりしたらいいと思う。
無給でも実家に滞在するんだし、航空券代さえ何とかなれば滞在中の費用は大丈夫でしょ?
依存症のことを母親に話した時に、『いざとなればアイルランドに帰っておいで。
直前価格の航空券代はすぐ出せるようにしてあるから』って言ってもらったんでしょ?
今がそのいざという時なんだから頼ればいい」と私の意見を伝えました。

彼は「火曜の新しい仕事がやっていけなそうだったら、
ニュージーランドにいても仕方ないからアイルランドに帰ることにするよ」と。

彼がアイルランドに一時帰国するのは彼と私両方にとっていいと思います。

正直今の状態が続くのは私にもしんどいからいい休憩になるし、
彼にとってもお兄さんのお葬式でしか過去7年間帰ってないから
母国でゆっくりするのが7年なかったわけだし、
家族や気心知れた幼馴染や旧友たちとゆっくり過ごして充電してほしいです。

仕事の方は「家族の緊急事態なので、無給で一か月帰ります(彼も家族の一部だし)」
と雇用主に言えば多分休みは問題なく取れるし、
永住権申請の方は彼側の書類さえ揃えば
あとは私が移民弁護士と連携して手続きできますし。

彼が辛いなら、ニュージーランドのresident visa取得後一年だけ私一人で住んで
permanent resident visaに切り替えてからアイルランドに飛んで、
アイルランドで暮らしても構いません。

片方がpermanent residentだと、
もし後々ニュージーランドに戻って来たくなった時に便利でしょうから。

私もただの事務職だけど英語圏である程度職歴ができてきたから、
ビザさえ何とかなれば英語圏で仕事には付けるでしょうし。

どうなるのでしょうか…。

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