アルコール依存症者の家族がクイーンズ・ギャンビット (The Queen’s Gambit)を見た感想

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Netflixでクイーンズ・ギャンビット (The Queen’s Gambit)というドラマを見ました。

全7話で、各話45分ほどです。

チェスの天才的才能を持った主人公が薬物依存症とアルコール依存症を克服し、
チェスの世界チャンピオンになるという話です。

「薬物を摂取しないと、チェス(仕事)ができないと思い込む」

「翌日に大事な試合(仕事)があるのに、前日の夜に飲みすぎてしまう」

「連続飲酒に陥り友人と連絡がつかなくなる」

「一緒に飲んだ友人から、飲酒量を心配されて飲酒を止めるよう言われる」

「友人よりも飲酒を優先し、友人から縁を切られる」

「助けが必要なことに耳を貸さない」


など、薬物&アルコール依存症者あるあるの描写がありました。

そのあたりはリアリティーがありましたが、
克服していく過程は現実に即していませんでした。

まず、主人公が依存症をたった一瞬で克服してしまったんですよね。

三度目の世界チャンピオンとの試合前日に
「薬物が欲しくてたまらない。
明日の試合のために薬物が必要だ」と言う主人公に、
友人は「薬物とアルコールがなくたって、
君はよくやってきたじゃないか」と言います。

それで主人公がはたと、
「薬物が必要だと思っていた」と言い、
薬物が必要だというのは自分の思い込みで、事実ではないことに気づきます。

そして薬物を使わないクリーンな状態で翌日の試合に挑み、
薬物なしでも試合に勝って、華麗に依存症克服、
世界チャンピオンになるという結末です。

でも、実際の依存症は一瞬の気づきだけで克服できません

私のパートナーはアルコール依存症なので側で彼を見ていて分かるのですが、
まず実際は薬物を止めて数日~二週間は身体的な離脱症状があります

頭痛がしたり、イライラしたり、嘔吐したり、
酷くなると幻覚や幻聴もあります。

人によって症状は様々です。

特定の物質を長期間摂取していると、
その物質が体内にある状態が普通になります。

ですので、その物質の摂取を急激に断つと、
脳が「その物質を摂取せよ」と指令を出し、
依存物質への渇望が起こります。

このように、依存症とは脳が機能不全に陥っている状態なので、
「自分には依存物質が必要ない」と例え気づいても、
なかなかスパッと止められない
場合が多いです。

止めよう、と決意してもついまた摂取してしまう
(これをスリップと言います)のは非常によくあることです。

もちろんスリップなしで一発で辞められる人達もいますが、
それはかなりの少数派です。

スリップしたことを本人も周りも責めず、
どうしてスリップしてしまったのかを分析し、
そこで諦めず再び止めていくのが理想です。

薬物依存症、アルコール依存症が主題の映画ではないので
依存症の描写にそこまで正確性を求められないのだとは思いますが、
話の流れ的に大きなテーマではあったので、
そのあたりが依存症者の家族としては少し残念でした。

それ以外は良い作品で、チェスのボードや駒が格好良く、
今までやった事がないチェスに興味が出てきました。

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