コロナウイルス対策に成功したニュージーランドが、見殺しにしている人達の話

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最近、外国人として住むことの怖さというか、
不安定さを感じる日々です。

 

 

ニュージーランドではビザに関わらず
ロックダウン開始時点で雇用があり、
雇用がそのまま継続される場合は政府が休業補償を
6月10日までの12週分出すようになっていました。

最近になり、休業補償が9月1日まで延長となりました。

しかし、ワークビザ、学生ビザなどの短期ビザの外国人は
この休業補償を貰えていない人が多い
です。

というのも、そのような短期ビザの外国人を一番雇っているのが観光業と飲食業で、
それらの業界はロックダウン前の国境封鎖の時点で大損害を受けていて、
ロックダウン前に解雇された人が多かったからです。

そしてロックダウンに入り無収入になり、
でも永住権がないので生活保護の受給権もなく、
もう家賃どころか食費も払えず、
仕事を失った短期ビザの外国人の多くが
チャリティーが提供する食料に頼って命を繋いでいる状態
です。

観光業で栄えていた街・クイーンズタウンの異常事態

観光業で栄えていた南島にあるクイーンズダウンという街は、
短期ビザの外国人が一番集中して住んでいる街です。

3月下旬のロックダウン前か直後から、
その街があるオタゴ地域のカウンシルの長が
「短期ビザの外国人に救済措置を!」と政府に訴えてきたのに、
政府は長期間何もしませんでした。

二週間ほど前からどのビザでも緊急の住居に入れることになり、
そこに入居すれば食べ物ももらえるようになりましたが、
現金による救済措置は今に至るまでありません。

しかもその緊急の住居はきちんとした住宅ではなく、
モーテルかホテルで、滞在できるのは一週間以内で、しかも有料です。

中央政府の動きを待っていられなかったオタゴカウンシルは
独自の措置で週当たり$240ほどの現金給付を行いましたが、
焼け石に水です。

街の人口約16000人のうち9000人が
オタゴカウンシルの救済措置に登録しているという異常事態
で、
うち6000人が短期ビザの外国人で、
現地でフードパーセルを配るなど支援している救世軍が人道的危機を宣言、
「タイタニックをバンドエイドで修理しているようだ」と。

政府が外国人に生活保護を一時的に与えるのは
法的に無理だから何もしないのか?と思いきや、
法律は既にあります。

the Social Security Act(社会保障法)のs64
(Emergency Benefit: grant during epidemic in New Zealand
緊急生活保護:ニュージーランドでのエピデミック中に許可される)
をただ実施すればいいのですが、
社会保障省大臣が実施するのを拒んでいる状態です。

「新しい感染症で世界中が国境封鎖されてフライトは飛んでいないし、
ニュージーランドはロックダウンまでしたのに実施を拒むとは、
なぜその法律がそもそも存在しているんだ?無意味では?」

という批判があります。

今は休業補償を貰えている短期ビザの外国人達も
休業補償を貰える期間が終われば多くが解雇される見込みです。

 

 

技能職で働いてきた短期ビザの外国人への非道な扱い

先々週はRNZという放送局のニュースをYoutubeで見ていたら、
ワークビザを持っていて、転職して雇用主を変更のため
新しいワークビザの申請をした時点でロックダウンが始まってビザの審査が止まり、
働けなくなってしまった建築業の短期ビザの外国人の男性の話が出ていました。

その男性は家賃が払えなくなり家を失ってから
治安が悪い南オークランドで車上生活をしていて、
チャリティーサービスに来て恥ずかしそうに大人用のおむつを頼んだそうです。

夜に屋外のトイレを探すのが怖いから、おむつをして寝たいんだと。

もうそれを聞いて私は怒りで血が沸騰しそうになりました。

建築業で働けるほど壮健な成人男性が
どんな気持ちでチャリティーサービスに行って
大人用おむつを頼んだか
と考えると、涙が出ました。

技能職で働いて税金を払い経済に貢献してきたのに、
国境が各国で封鎖されて母国に帰れもしない緊急事態に
短期ビザの外国人だからとそんな仕打ちをこの国はするのか
と。

また、5月13日には外務大臣が、
「経済的に苦しんでいる短期ビザの外国人は、
面倒を見切れないので母国に帰るように」という発言をしました。

外務大臣ならば、各国の国境が封鎖されて
外国人は例え母国に帰りたくとも帰れない状況なのは分かっているはず。

それなのにそんな発言をするなんて、信じられません。

国外から再入国できなくなった短期ビザの外国人への扱い

国内にいる短期ビザの外国人はそんな状況で、
国境封鎖の時にたまたま休暇や母国への帰省で
ニュージーランド国外にいた人達は未だに再入国が許されていません。

人道的理由(曖昧)がある人と、
医療系のエッセンシャルワーカーは特例で許されているようですが。

多くの短期ビザ所持者が国外に取り残されていて、
ニュージーランド国内で家賃と光熱費が発生し続けていて、
車、家財、所持品が全て国内にあって、
でも再入国ができないので処分もできない状態です。

そして、再入国の目途が立たないので
彼らは仕事を失いそうになっています。

そんな中でニュージーランド政府が
「利益が欲しいので、新規留学生を入れたい」という教育業界の要請を受けて、
「新規留学生の入国ができるよう検討する」と言い出し、
短期ビザの外国人達、特に国外に取り残されている人達が怒り心頭になりました。

ウイルス対策のための国境封鎖という名目で
国民と永住権保持者だけしか入国できず自分達は締め出されているのに、
新しい留学生を国外から入れるのか、結局お金か
と。

そりゃあ、自分たちが帰れない理由は一体何だということになりますよね…。

また、国内にいる留学生達からも
「既存の留学生へのケアが十分になされていないのに、
新規留学生を入れるとはどういうことか?」と苦情が出ています。

そもそもお金なら、
ワークビザの人達は再入国後仕事に戻って働いて納税するし、
学生ビザの人達も戻ったらまた学費を納めるしバイトもするだろうし、
どちらもそこで暮らして家賃を払って食べ物を買い消費税も払い、
たくさん納税するのですが…。

ニュージーランドは大した産業が国内に特になくて、
留学生には地元の学生の何倍もの学費を吹っかけて、
そこから利益を出す構造です。

それに新規の留学生を入れたところで、
その留学生との目的とずれがあると思うんですよね。

というのは、留学生は多分永住権を取りたくて来る訳で、
でもニュージーランドは永住権を出したくないからです。

高額な学費を出して、南半球の田舎にある程度のそう高くない大学には
永住権を取れなければわざわざ来ない
のでは…。

キウイでも優秀ならアメリカかイギリスの大学に進学しています。

また、最近まで私は知らなかったのですが、
中国やインドには悪徳エージェントがいて、
ニュージーランド移民局からのライセンスなど何もいらず運営でき、
「半年学校に通えば、永住権を簡単に取れますよ」などと夢を見させて、
多額のコミッション狙いで留学生を送り込むことがよくあるらしいです。

留学生の間では、Human trafficking(人身売買)ならぬ、
Education traffickingと呼ばれている
のだとか…。

それで借金まで背負って現地に着いた留学生が
「永住権を取れない」と気づいて、
「でも、借金を返さなきゃ」とバイトに精を出したり、
果ては生活が苦しくてセックスワークをする場合もあるらしいです。

7月までにビザが切れる人はロックダウンと同時に
9月下旬まで自動的にビザの期限が伸びて違法滞在にはならないものの
財政措置がなくて困窮する短期ビザの外国人がたくさんいます。

 

 

経済的に困窮する短期ビザの外国人を助けなければ何が起こるか?

ニュージーランド政府は渋っていますが、
生活保護受給権を失業した短期ビザの外国人に与えないと、
生きるためにアンダーテーブルで働く人たちが出てきます。

そうすればその人達は搾取される可能性が高い訳で、
でも搾取されてもビザの付帯条件に違反していることを自分達で分かっているので
(ワークビザなら、雇用主が限定されているなど)、
発覚して強制送還になるのを恐れて、搾取されても政府に助けを求めません。

そうして搾取してる会社が不当に安い価格で価格競争に勝っていって、
きちんとした給料を支払っている会社が人件費を削減するようになるから、
結局回りまわって国民への損害になります。

さらに、一旦そうなってしまえばその状況を是正するのに
一度きりの生活保護受給を行うよりも結局多額の税金がかかります

先日、今年度の政府予算が発表されたのですが、
短期ビザの外国人への予算はつかず、
今のところは失業した短期ビザの外国人は見殺しにする方針の様です。

「このままでは、ニュージーランドは第二のシンガポールになるのでは?」
というのが最近の私の心配です。

というのも、ニュージーランドは新規感染者が0人の日も出てきていますが、
それでもまだウイルスが国内から消えたわけではない
からです。

もし私が雇用主に紐づいたワークビザを持っていて、
失職したのなら家賃を減らすため安い場所に引っ越します。

政府からの救済が期待できないので。

仮にそこがタコ部屋のような大人数が暮らす場所であっても、
路上で寝るよりは安全と思えるので、安い家賃の住居に引っ越します。

そんな過密状態の住居で、うち一人が感染したらどうなるか?
というのはシンガポールを見れば分かりますよね…。

既に住居を失い、車上・路上暮らしをしている短期ビザの外国人が出てきています。

車を持っていない人はホームレスか、
安くて過密状態の住居に暮らさざるを得ないでしょう。

自分は偶然、運が良かっただけという恐ろしさ

短期ビザの外国人を取り巻く状況があまりに不安定なので、
永住権を持っている人は安泰でいいなあ、と思っていたのですが、
状況によっては大変そうです。

南アフリカにたくさんのニュージーランド人と
永住権所持者が取り残されたためチャーター機が派遣されたのですが、
チャーター機の搭乗はニュージーランド国民が優先で、
永住権所持者はその上で空きがあれば乗れる、とのことでした。

第一便がニュージーランド国民で満席になって、
かといって第二便の派遣がいつになるかは分からず、
永住権はあるけれどもニュージーランドに帰れなくなっているようです。

普段は差が特にないですが、
こういう緊急時にはやはり国民と永住権を持っているとはいえ
外国人には差が出るんですね…。

カナダはワーキングホリデービザで渡航する人は
ジョブオファーを持ってないといけないようになったとかで、
移民使い捨ての時代が来るのでしょうかね。

私は本当に幸運で、パートナーがたまたま体力がある大企業で働いていたから
解雇にならずに済んで休業補償金がもらえて、
建築業だからレベル3で仕事に戻れてまたお金が稼げて、
私は貯金がまだあるから仕事がなくても彼に頼らず家賃などきちんと払えているし、
ビザの有効期限も約二年後まであるし、
国内にいたので再入国できなくて困ってることもありません。

でも、どれもこれもただの偶然で、
「危なかった。危機一髪だった」というのが私の感想です。

もしパートナーの前の雇用主が移民局関連で炎上せず
転職せずに留まり続けていたら、
彼はサブコントラクターだったのでおそらくロックダウンと同時に失職して
休業補償金がもらえなかったでしょう。

サブコントラクターを雇っているLabour Hireの会社が
休業補償金申請を政府に出さず、ただ解雇したケースが多数ありました。

もし彼が仕事を失っていたら、
私の残り少ない貯金では彼の生活費まで長期間は抱えきれず
ロックダウン終了前に貯金を全部使い果たして
家賃が支払えず、食べ物も買えず
チャリティーサービスの食料配給で何とか命を繋いでいる状態だったでしょう。

ロックダウン期間中は移民局が止まっていたので、
失職後に次の雇用主を見つけたとしても
彼のワークビザの雇用主変更の申請ができず、
建築業は再開してるのに彼は数週間仕事に戻れなかったでしょう。

あるいは、もし彼のアイルランドにいるお兄さんの結婚式
三月だったら、ニュージーランドに戻れなくなり、
仕事もビザも失い、でも家財道具も車も処分できず、
ニュージーランドで発生し続ける家賃と光熱費を無収入で払っていたでしょう。

こうして考えだすと、
本当に自分はたまたま運が良かっただけだったと背筋が寒くなります。

だから他の短期ビザの外国人が困っているのを見ると本当に他人事ではなくて、
大臣達にメールを書いてみたり(効果は不明)、
それで秘書から返事が来て驚いてたり、
短期ビザの外国人への助けを求める趣旨の嘆願書には
片っ端から署名したりしています。

これぐらいしかできないので…。

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