アルコール依存症の家族として自分を責めてしまう瞬間

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配偶者がアルコール依存症になったのは私のせいではない…
と頭では分かっているのですが、
どこかで私のせいではないかと思ってしまいます。

 

 

彼は元々、オーストラリアのワーキングホリデービザが切れた後は
東南アジアをゆっくり旅してアイルランドに永久帰国するつもりでした。

ところがオーストラリアで私と出会い、
放射能汚染が怖いので南半球で永住権を取りたいという私の願いを叶えようと
ワーキングホリデーで私と一緒にニュージーランドに飛び、
彼はニュージーランドで慣れない仕事を毎日怒鳴られながら
時には出社拒否になるほどのストレスを抱えつつ頑張りました。

ワークビザを取れたと思ったら、
ビザが雇用主に紐づいているものだから
嫌な事があったからといって退職もできず。

さらに配偶者である私のビザが彼のビザに乗っかったものなので
私をニュージーランドにいられるようにするためには
どんなに辛くても退職するという選択肢は彼にはなく、
彼はストレスを飲酒でごまかしながら数年を過ごしてきました。

アイルランドからの幼馴染がたくさんいたオーストラリアと違い、
ニュージーランドには知り合いすらもおらず
友達とのお喋りが大好きな彼は寂しい日々を過ごすことになりました。

彼の飲酒量は明らかに仕事のストレスと比例して増えていったし、
それに加えて私との間がうまく行っていない時期もあり、
その時は「俺は特に来たくもなかった国で、
どうして自分に冷たい彼女のためにここまでしているんだろう?」
と彼は何度も自問していたのだとか。

この経緯を私はずっと側で見てきましたし、
泥酔した彼と喧嘩した時に
「俺は君にニュージーランドのビザを取らせるために
毎日すごくストレスを抱えているんだ。
このストレスを解消するには飲むしかないんだ。
俺がこうして飲んでいるのは君のせいだ」

といつも彼から責められてきました。

だから、「彼にアルコール依存症になるまでのストレスを与え
追い込んでしまったのは自分のせいではないか?
自分は、人ひとりの人生を潰してしまったのではないか?」

とどうしても思ってしまうのです。

でも、それは本当は違うのですよね。

 

 

仕事のストレスがあまりに辛いなら、
私と別れてアイルランドに帰るという選択肢が彼にはありました。

「あなたの仕事が辛いなら、ニュージーランドのビザはいらない。
あなたの健康が第一。私は二人一緒なら、
アイルランドでも東南アジアでもどこに行っても構わない」
と私から彼に何度も伝えていましたし、
私を連れてアイルランドに帰るという選択肢もありました。

仕事のストレスがいくら辛かろうと、
毎週末ごとに浴びるほど飲む状態になる前に
飲酒以外のストレス解消法を見つける選択肢だってありました。

でも、彼はそれらの選択肢を取らなかったし、
それらの選択肢を取らないという決断をしたのは彼です。

「俺は君にニュージーランドのビザを取らせるために
毎日すごくストレスを抱えているんだ」
という彼の言葉も、そのまま受け取ることはできません。

確かにニュージーランドの永住権を欲しがっているのは私ですが、
でも彼に「私のために永住権を取ってくれ」とお願いはしていなくて、
いわば彼が勝手に頑張った訳なので。

こう考えるのは、正しいんです。

 

 

でもこう考えると、まるで
「彼が頼んでいないのに一人で勝手に頑張って
アルコール依存症になって、だから自業自得なんだ」

と無慈悲に突き放してしまうようで…。

そう思い切れないんです。

確かに、私が「私のためにニュージーランドのビザを取って」と頼んだ訳ではありません。

でも、彼は私のその願望を汲んで
「彼女のために」と精一杯の努力をして
私への愛情ゆえに願いを叶えようとしてくれたんです。

実際、彼の数年にわたる頑張りのおかげで
順調に事が進めばあと二年ほどで永住権が手に入る予定です。

そこを「自業自得」と突き放すのはできない、
やっぱり私のせいではないか、
完全に私のせいではないとしても
一部は私のせいではないか?
と罪悪感を抱いてしまいます。

最近アルコール依存症の自覚をしてくれた彼にそう話すと、
彼からはこんな言葉が返ってきました。

 

「俺がアルコール依存症になったのは君のせいじゃないよ。

『君のせいで俺はこんなに苦しい』と君を責めていたのは、
そうすれば君を言い訳にして飲酒できたから。

この国でのストレスで依存症になったのは事実だけど、
今ここで依存症になっていなかったとしても、
アイルランドに帰っていたとしても
強いストレスは人生のどこかで必ずかかる訳で、
遅かれ早かれいつか依存症になっていたと思う。

だから、むしろこのタイミングで依存症になって良かったよ。

だって、君が側にいてくれるんだもの!」

「確かにニュージーランドには別に来たい訳じゃなかったけど、
ここで仕事を頑張ることでキャリアがついてきたし、
それは君がいつも側で俺を支えてくれていたおかげだ。

外国で永住権を取るのは難しくて
皆に出来ることじゃないのに俺は取れそうで、
もし取れたら俺の今後の人生で大きな自信になる。

君に出会わなければ、俺は多分今頃アイルランドで
何のキャリアにもならない低賃金の仕事を適当にして、
パーティーばかりしてフラフラして何も達成しない毎日を送っていたと思う。

君と出会わなければ依存症にならなかったのに、なんて恨まないよ。

君と出会えたことは、俺の人生の中で一番幸せなことだよ」

この言葉を聞いて胸のつかえが少し下りたのですが、
それでも…と私は考えてしまうのですよね。

アルコール依存症の家族として、
ここが私の回復しないといけないポイントなのかもしれません。

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